リン(リン酸)の概要
リン(英phosphorus、P)は生体内ではリン酸の形で存在します。
細胞膜の構成元素であり、リンタンパク質や核酸などの、生命維持物質の重要な部分を占め、ATPとして代謝エネルギーの貯蔵をするなど生体内の生理機構の中で重要な役割を果たしています。
リンは多くの食品に含まれています。健常者では、リンの必要量を超える摂取がよくみられますが、入院患者等では一般的に摂取量が不足しています。カルシウムに対するリンの摂取割合が重要です。
リンは骨の形成と維持におけるカルシウムとマグネシウムに密接に関連するミネラルであり、体内の85%のリンは骨に含まれています。
現代では食品添加物として各種リン酸塩が加工食品に用いられるため、不足よりは摂取過多が指摘されています。多く含む食品としては、田作り(2300mg/100g)、プロセスチーズ(657mg/100g)、わかさぎ(350mg/100g)などがあります。加工食品、コーラ、ソフトドリンク、肉、チーズ、高蛋白質食品。穀類の粉には主にフィチン酸やフィチン酸塩として含まれますが、吸収されにくいです。
日本人の食事摂取基準
目安量:(成人男性 1050mg)(成人女性900mg)
上限量:(成人男性 3500mg)(成人女性3500mg)
リン(リン酸)の成分
リン(リン酸)の効果効能
リン(リン酸)の効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
リン(リン酸)はカルシウムと結合し、骨や歯の原料となります。
浸透圧の調整、体液の中性保持などの働きがあるとの報告があります。
リン酸はカルシウム利用を促進し、低体重出生児のくる病を予防します。
リン酸の欠乏で起こる症状
一般の人が食事によりリン(リン酸)を欠乏することはほとんどないです。しかし、アルコール中毒患者や入院患者には欠乏がみられます。
リン(リン酸)欠乏の徴候と症状は、
衰弱、急性心不全、呼吸器不全、耐糖能低下、赤血球・A血球数減少、血小板機能低下、小児では発育の遅れ・骨格と骨の変形、アルコール中毒症(尿への排泄促進により)、早産、くる病
などがあります。
リン(リン酸)欠乏によりだるさを感じたり、新陳代謝低下を起こします。
リン(リン酸)を欠乏すると横紋筋変性からくる骨格筋症を引き起こします。カルシウム吸収や排泄に影響を与えます。カルシウムと結合し、骨や歯の原料となるので、欠乏すると骨が弱くなります。
リン(リン酸)過剰摂取の副作用・毒性
リン(リン酸)の過剰摂取での副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
低カルシウム血症、軟組織のカルシウム沈着、副甲状腺機能亢進、骨の脱灰、骨の代謝異常、骨喪失の可能性があります。
しかし実際にリンの摂りすぎで骨喪失になったという報告はまだありません。欠乏すると筋力低下を引き起こします。
リン(リン酸)サプリメントによる下痢が現れることがあります。
過剰摂取による低カルシウム血症(腎疾患や上皮小体機能低下症がある場合を除く)が起こることがあります。
慢性腎不全患者はリンの糸球体濾過に障害がある場合、血清リン濃度が上昇し。カルシウムが低下して上皮小体ホルモンを刺激するため、リンの摂取を制限しなければなりません。そうしないと、二次的上皮小体機能亢進症状の腎性骨形成異常症と骨量減少が発現します。過リン酸塩血症と上皮小体機能亢進症はさらに腎に障害を与えます。
リン(リン酸)の研究・エビデンス
研究①くる病
未熟児53例・方法:リン酸を処方した(50mg/日を毎回のミルクに加える)場合とミルクだけの場合とを無作為に割り付け、比較。
結果:40例が試験を完了しました。対照群19例のうち8例がくる病になったが、リン酸を処方された21例全員がくる病を発症しませんでした。胎盤機能不全は未熟児くる病の発症原因と考えられますが、それはカルシウムとリン酸の輸送が影響されるためです。
作用メカニズム
リンはエネルギー代謝と調節(ATPに不可欠である)に関与すると同時に骨と歯の維持に主な役割をもつ。蛋白質のリン酸化は細胞で行われる最も一般的な反応の1つであり、また、ホルモン作用とシグナル伝達過程に重要です。
リンはRNAとDNAを構成し、細胞間の緩衝物質として作用し、膜リン脂質の構成成分となります。