ノコギリヤシ(ノコギリパルメット)の概要
ノコギリヤシ。別名はノコギリパルメット、ソーパルメット。(英)Saw palmetto、Serenoa repens、(またはScvmoaserrulata、Sabal Serrulata)やし科[セレノア属]
中高年男性向けのサプリメントの成分として利用されることが多いです。
ノコギリヤシの実は北米大陸原産で、先住民により使用されていました。良性前立腺肥大に対する顕著な症状緩和効果概要が近年科学的に研究され、効果が実証されてきています。
ノコギリヤシは米国では最も一般的なヤシで、使用部位は実。群生する根茎性のヤシで、高さ約1.8〜3mになり(幹は這って直立しない)、45cm〜1mに広がる青緑〜黄緑色の披針系の葉を持ちます。夏に芳香性のクリーム色の花が咲き、冬の始めに卵型、長さ2.5cmのブルーブラックの甘い実がなります。主に北米南東部の沿岸地帯に分布し、フロリダ、カロライナの北部から南部、テキサス州の大西洋部に沿って低木密生林を作っています。
ノコギリヤシの果実は食用とされた実績もあり、毒性は少ないといいます。臨床試験により、良性前立腺肥大症(BPH)への有効性が認められています。前立腺特異的抗原(PSA)には影響を与えません。
ドイツのコミッションEでも良性前立腺肥大の治療目的で承認されています。ただし、ノコギリヤシは症状を緩和しますが、医師の診断を定期的に受けることが必要です。
ノコギリヤシの成分
ノコギリヤシの効果効能
ノコギリヤシの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「食欲、鎮静、片頭痛、精巣萎縮、性欲、ED、勃起不全、不妊、母乳分泌、月経痛、豊胸、内分泌、代謝、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、前立腺炎、良性前立腺肥大、利尿、脱毛症、去痰、喘息、気管支炎、咳、かぜ、上気道カタル、咽頭炎、粘膜の炎症、がん、衰弱、体カ、筋肉」
ノコギリヤシは食欲を刺激し、食物吸収を促すとされるとの報告があります。
ノコギリヤシは穏やかな鎮静薬として利用される、果実は伝統的に鎮静薬とみなされている、伝統的に片頭痛に用いられる等の報告があります。
ノコギリヤシの成分のステロイドサポニンの関与により男性の精巣萎縮、性欲低下、ED(勃起不全)の治療に用いられる、女性の機能的不妊症や母乳の分泌の増加、月経痛の緩和、性欲欠乏、豊胸に用いられる、果実の粉末坐薬は子宮および膣の強壮効果として使用される等の報告があります。
ノコギリヤシの果実をお茶、カプセル、錠剤、チンキの形で主に内分泌剤、代謝促進剤として用いる、果実は抗アンドロゲン、代謝系抗エストロゲンとエストロゲンの各効果を持つと考えられている等の報告があります。
ドイツのコミッションEでは第I、II期の良性前立腺肥大による排尿障害に対するノコギリヤシの使用が承認されています。良性前立腺肥大に対して有益である可能性が高いです。
ノコギリヤシは前立腺炎、良性前立腺肥大に推奨される、ヘキサンまたはエタノールの抽出物を良性前立腺肥大の第I期、第Ⅱ期の排尿困難治療用抗テストステロン剤および抗滲出剤調製に用いる、ただし症状を抑えるだけで、肥大を減少させるものではない、尿路殺菌、利尿効果があり、膀胱炎などの泌尿器疾患に用いられる等の報告があります。
ノコギリヤシは男性の脱毛症に効果があるとされるとの報告があります。
ノコギリヤシは去痰効果をもち、喘息や気管支炎、咳に対して古くから使用されているとの報告があります。
ノコギリヤシはかぜや上気道カタル、鼻かぜに効果があるとの報告があります。
ノコギリヤシ果実の粉末坐薬はがんの民間療法に利用されるとの報告があります。
咽頭炎、粘膜の炎症にノコギリヤシを用いるとの報告があります。
高齢者の衰弱に用いられる、体カ強化、筋肉増加に効果があるとされる等の報告があります。
ノコギリヤシの副作用・毒性
ノコギリヤシの副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
ノコギリヤシは有害事象が少ないですが、まれに吐き気、腹痛などの胃腸障害の副作用が起こることがあります。
ドイツのハーブ委員会コミッションEは、ノコギリヤシを摂取する場合、医師に定期的に診断を受けるべきであると指摘しています。これは、ノコギリヤシは前立腺肥大の症状は緩和しますが、前立腺サイズ肥大の進行を止めないため、前立腺がんの症状を見逃す可能性があるからです。
ノコギリヤシは抗アンドロゲン活性及びエストロゲン様活性を持つため、妊娠中及び授乳中は避けるべきです。
経口避妊薬やホルモン療法との併用で、それらの効果に影響を与えることがあります。
ノコギリヤシを含むと思われるサプリメントで、肝障害が1例、報告されていますが、ハーブやサプリメントとの相互作用については十分なデータがありません。
研究・エビデンス
研究①良性前立腺肥大症
良性前立腺肥大症については、最長48週間にわたる複数の臨床研究により、ノコギリヤシは良性前立腺肥大の症状である頻尿、排尿痛、尿意切迫、会陰の重苦しさ、排尿困難などを軽減しました。また夜間の尿の回数を減少し、最大及び平均尿量を増やし、残尿感を改善しました。これは既存の医薬品に匹敵するほどの効果でした。
ただし、ノコギリヤシは前立腺のサイズや、前立腺特異抗原価は下げないといいます。またノコギリヤシが効果を示すまでには摂取ヒトでのし始めてから1〜2ヶ月を要します。
また、ほとんどの臨床研究は脂肪酸80〜90%を含むノコギリヤシ実の脂質科学的実証抽出物を使用しています。
その他も、臨床試験が近年多数発表され(患者数600人以上)、ヘキサン抽出物あるいは超臨界CO2抽出物が、良性前立腺肥大における排尿困難、夜間尿、頻尿、尿放出カ減退などの白覚的・他覚的症状を改善することを示しています。良性前立腺肥大における自己評点の改善は、プラセボと比較してノコギリヤシを摂取した男性に有効性、効果が認められたなどの報告があり、有効であると考えられます。
研究②ノコギリヤシと治療薬の比較
ノコギリヤシとテラゾシン(良性前立腺肥大症(BPH)治療薬)を比較した試験はこれまでにないですが、2種類のa遮断薬およびフィナステリドとの比較は行われています。
BPHの患者63例を対象とする3週間の試験で、アルフゾシン(2.5mg、1日3回投与)とノコギリヤシ(160mg、1日2回投与)の効果を比較した臨床症状、尿流量および経腹的超音波検査による残尿量を検査しました。
両群とも夜間頻尿、日中の頻尿、最大尿流量、平均尿流量および残尿量に有意な改善が認められ、2群間に有意な差は認められませんでした。しかし、アルフゾシン投与群はノコギリヤシ投与群に比べ、総症状スコア、視覚的アナログスケールおよび全体的な臨床的印象によるスコアが有意に優れていました。