カノコソウの概要
カノコソウ(別名セイヨウカノコソウ、キッソウコン、ワレリア、バレリアン)(英 Valerian)おみなえし科[カノコソウ属]
カノコソウはヨーロッパ産のセイヨウカノコソウの代用品として近年日本産も使用されるようになったハーブです。ヨーロッパ産と日本産では種が異なり、主成分の含有量が異なっています。しかし、どちらも鎮静効果があるといわれ、精神不安、ヒステリーや不眠などに使用されています。
カノコソウは多年生であり、白からうすいピンクの香りのよい花が咲きます。ヨーロッパや北米の牧草地や林に生育し、ヨーロッパ、ロシアなどで栽培されます。北海道〜九州、サハリン、朝鮮半島、台湾にも分布します。高さ40〜80cm。花期は5〜7月。医療用として少なくとも2000年も使用され、ガレノス(ギリシャの医者)やディオスコリデス(植物学者)にも知られていました。
使用部分は根と根茎(吉草根キッソウコン、けっ草根ケッソウコン)。局方のキッソウコンはカノコソウの根と根茎を夏に掘り取り、日干しにします。吉草根を刻んでエタノールを加えて服用します。
セイヨウカノコソウはコミッションE(ドイツのハーブ承認委員会)で治療目的での使用を承認されています。その場合の使用法は根を40℃以下で注意深く乾燥させたものを、水で抽出して輸液や、チンキ、抽出物は2〜3gに相当する量を1日1〜数回使用します。また風呂に乾燥した根を100g入れて湯浴という形で外用で使用します。
カノコソウは穏やかな鎮静・催眠作用を有し、臨床試験もその使用を支持しています。—般用医薬品では、鎮静作用を期待して、催眠鎮静薬、女性用薬に配合されています。気持ちを落ち着かせるサプリメントとして用いられることもあります。
過剰摂取や長期の連用には副作用があるという説もありますが、コミッションEモノグラフではこの点に関して報告はありません。摂取後は眠気の心配があるので、車の運転や機械の操作は避けるべきでしょう。
カノコソウの成分
コミッションEモノグラフで承認されているセイヨウカノコソウ乾燥品では、モノテルペン類、吉草酸などのセスキテルペンからなる精油を含み、治療目的での処方薬では、熱に弱く化学的に不安定な成分のバレポトリエートは含まれていません。
カノコソウの効果効能
カノコソウの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「鎮静、高血圧、強心、動悸、消化管機能改善、駆風(ガス抜き)、ヒステリー、神経過敏、心臓神経症、神経衰弱、鎮痛、不眠症、不安、痙攣、片頭痛、頭痛、神経性消化管機能不全、神経系高揚、湿疹、潰瘍、外傷、フケ」
カノコソウには血圧降下効果があり、高血圧に経口摂取する、強心効果もあり、動悸を鎮める等の報告があります。
カノコソウには消化管機能改善効果がある、駆風薬として用いられる等の報告があります。
カノコソウの精油には鎮静効果がありヒステリー、神経過敏、心臓神経症に役立つ、日本ではカノコソウ粗末100gに70%エタノールを加えて1リットルとしたものをカノコソウチンキとして、神経衰弱、ヒステリーなどの興奮時の鎮静薬とする、セイヨウカノコソウの特徴的な成分のバレポトリエートに中枢神経系に対する鎮痛効果があり、不眠、不安、痙攣、片頭痛、頭痛、神経性消化管機能不全に経口摂取する、日本産のカノコソウのジクロルメタン抽出物及びケッソグリコールジアセテート、ケッソグリコール-8-モノアセテートには鎮静効果が認められる等の報告があります。
カノコソウの精油を動物に与えると少量では神経系の高揚及び血圧上昇が認められますが、大量では中枢神経系の麻痺、血圧降下及び反射興奮系の減退をきたす場合もある、気分や集中カの改善に有効、鎮痛、鎮痙に効果がある等の報告があります。
カノコソウは外用薬として湿疹、潰瘍、軽い外傷(とくに裂傷)に有効、チンキにはフケをなくす効果があるという報告があります。
セイヨウカノコソウは気持ちの高揚している患者に対して鎮静効果がある一方、疲労している者に対しては刺激効果があり、疲労回復に効果があるとの報告があります。
カノコソウの過剰摂取による副作用・毒性
カノコソウの過剰摂取による副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
カノコソウの過剰摂取は頭痛、動悸、麻痺、筋肉の痙攣等の副作用を起こし、長期に摂取すると習慣性を獲得することがあるので避けるべきです。
カノコソウ摂取後は眠気の心配があるので、車の運転や機械の操作は注意すべきです。
カノコソウを過剰摂取していると、使用を中止した時にベンゾジアゼビンと同様の禁断症状が出ることがあります。
カノコソウは肝機能不全の患者に使用してはならないとされます。
カノコソウと鎮痛効果のあるハーブやサプリメント、医薬品、アルコールとの併用で、それらの鎮痛効果および副作用を増強させることがあります。
セイヨウカノコソウはチトクロームの効果を阻害するという知見があります。ヒトでは報告されていないですが、この酵素で代謝される医薬品を使用している人は注意して用いるか、使用を避けた方が良いでしょう。カノコソウを過剰に摂取していた患者は脳神経系の低下と傾眠、散瞳、頻脈、悪心、錯乱、尿停滞を含む抗コリン作用を示したとの報告があります。
研究・エビデンス
研究①カノコソウと不眠症
セイヨウカノコソウは約200名の不眠症患者に対する二重盲検ランダム化比較試験で、改善効果が認められています。臨床試験にはさまざまなセイヨウカノコソウの根エキスが用いられており、吉草酸を0.4~0.6%含む標準品も使用されています。
研究②カノコソウと副作用
18歳の男性が18.8〜23.5gのカノコソウの根を摂取したところ、疲労、痙攣性腹痛、胸がしめつけられる、振戦、軽い頭痛が出現しました。検査の結果は、散瞳と手の細かい振戦が認められただけでした。この患者は活性炭の治療を受け、すべての症状は24時間以内に消失しました。