ビタミンB6の効果効能、欠乏症や過剰摂取での副作用は? つわりやPMSに有効性

ビタミンB6 つわり PMS

ビタミンB6の概要

ビタミンB6 概要

ビタミンB6(別名ピリドキシン)には3種類の天然型ピリドキシンpyridoxine(PN)、ピリドキサールpyridoxal(PL)、ピリドキサミンpyridoxamine(PM)があります。

ビタミンB6はピリドキシン(主として植物に含まれる)、ピリドキサールおよびピリドキサミンリン酸(リン酸化物は動物組織によく含まれる)などの含窒素化合物の総称です。

ビタミンB6は、たんぱく質からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。マルチビタミンやビタミンB群、アミノ酸配合のサプリメントなどに使用されていることが多いです。

ビタミンB6を含む食品や医薬品

ビタミンB6を多く含む食品としては、レバー、肉、魚、全粒(小麦など)、大豆、ピーナッツ、その他の豆類、ナッツ、バナナ、アボカドなどがあります。

具体的な含有量の例としては、牛レバー(0.88mg/100g)、まぐろ(0.85mg/100g)、さんま(0.51mg/100g)です。

[1日摂取目安量】

上限値:10mg

下限値:0.30mg

法的機能表示栄養機能食品の栄養成分のひとつであり、0.3mgから10mgの含有で「ビタミンB6はタンパク質からのエネルギーの生産と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」の表示が可能です。

医療用医薬品ではビタミンB6製剤として、ビタミンB6欠乏症の予防および治療(イソニアジドなど、薬物投与によるものも含む)、ビタミンB6の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な場合の補給、ビタミンB6依存症(ビタミンB6反応性貧血)、ビタミンB6の欠乏または代謝障害が関与すると推定される疾患(口角炎、ロ辱炎、舌炎、急・慢性湿疹、脂漏性湿疹、接触皮膚炎、末梢神経炎、放射線障害)などに用いられます。栄養剤にも配合されています。

一般用医薬品ではビタミン巳製剤、ビタミンB2製剤、栄養剤、ドリンク剤、乗り物酔い予防薬、点眼薬、皮膚治療薬(外用)などに配合されています。

ビタミンB6は栄養機能食品の栄養素として認められており、1日摂取目安量を満たした商品については、栄養機能表示が認められています。

医薬品例

医療用医薬品:強カアデロキシン末

一般用医薬品:アクテージAN錠、チョコラBBプラス

ピリドキサールリン酸

■ピリドキサールリン酸■

ビタミンB6の補酵素型であるピリドキサールリン酸は、約100種類の酵素の補酵素として働き、最も主要な働きはアミノ酸の代謝に関与するトランスアミナーゼ、デカルボキシラーゼ等の補酵素としての機能です。

そのためタンパク質の摂取量に依存してビタミンB6の必要量は変動します。ビタミンB6は、そのほかにも循環器系や神経系などで生理機能を有し、臨床症状の治療と予防のために用いられています。

ビタミンB6の効果効能

ビタミンB6 効果 効能

ビタミンB6の効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。

■ビタミンB6の効果効能一覧■

「貧血、高ホモシステイン、食欲、神経伝達物質、興奮、抑うつ、錯乱、ダウン症、手根管症候群、神経症、麻痺発作、免疫、アレルギー、月経前症候群(PMS)、つわり、妊娠糖尿病、腎結石、脂質代謝、脂肪肝、グリコーゲン、皮膚、髪、湿疹、脂漏性皮膚炎、成長、乳児痙攣、ウイルス、歯石、口内炎、口唇口角亀裂、口角症、舌炎、浮腫、多動性機能障害症候群、遅発性ジスキネジー」

ビタミンB6は遺伝性鉄芽球性貧血(ピリドキシン応答性貧血)に対し経口で有効であるといわれています。

ビタミンB6は経口で葉酸およびビタミンB12と併用して、高ホモシステイン血症の改善に対して有効性、効果を示唆する報告があります。

ビタミンB6は冠動脈性心疾患のリスクファクターと考えられる血中ホモシステインレベルの調節に関わる、ビタミン類をサプリメントとして摂取した場合の心血管疾患への効果は、ヒト介入試験を行う必要がある等の報告があります。

ビタミンB6は神経伝達物質(セロトニン、タウリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンやアミノ酪酸)の合成に関わるため、セロトニンレベルの低い多動性脳機能障害症候群に対し、経口で効果があるという報告があります。

遅発性ジスキネジー(ロを動かす、足踏み、体をねじる等の持続性の不随意運動の総称で、向精神薬を長期投与したときなどに見られる)に対するビタミンB6の有効性、効果を示唆する報告があります。

ダウン症候群、手根管症候群(手の疼痛と知覚異常が症状の神経障害)、糖尿病性神経障害などの病気の治療薬や予防薬としてピリドキシンが処方されています。しかし、これらの試みではビタミンB6の効果はまだ不明瞭な部分もあります。

月経前症候群(PMS)の治療や予防薬としてピリドキシンが処方されていますが、ビタミンB6の効果はまだ不明瞭な部分もあります。

ビタミンB6はトリプトファンの代謝を正常に保ち、妊娠期のつわりを軽くするという報告、妊娠に伴う吐き気と嘔吐に対する有効性、効果を示唆する報告があります。

妊娠糖尿病及び糖尿病性神経障害の治療薬や予防薬としてピリドキシンが処方されていますが、これらの試みではB6の効果はまだ不明瞭な部分もあります。

ビタミンB6はステロイドホルモンの調節に関わり、内分泌疾患に対して効果を示す可能性がある等の報告があります。

腎臓結石の再発リスク減少に対するビタミンB6の有効性、効果を示唆する報告があります。

ビタミンB6は脂質代謝に関わり、脂肪肝の予防に役立つとの報告があります。

ビタミンB6はトランスアミナーゼの補酵素として各種アミノ酸、アミン類の生合成に関与するため健康な皮膚や髪を作るとの報告があります。

ビタミンB6は慢性腰痛患者に対して、非ステロイド性抗炎症薬との併用で、薬剤単独よりも効果が高かったとの報告があります。

ビタミンB6は成長を促進する効果があるとの報告があります。

ビタミンB6は抗菌、抗ウイルス免疫能を介してエイズなどのウイルス治療に役立つ可能性があるとの報告があります。

肺がんのリスク減少に対するビタミンB6の有効性、効果を示唆する報告があります。疫学調査により、血中ピリドキシン濃度の高い男性喫煙者は、肺がんリスクが低いという結果が示されました。

ビタミンB6は浮腫を起こす遺伝性鉄芽球性貧血(ピリドキシン応答性貧血)に対しては有効といわれています。

セロトニンレベルの低い多動性の子供に対しビタミンB6が有効であるという報告があります。

アルコールの多飲や食事の欠乏などによってペラクラおよびペラグラ脳症が起こり、ビタミンB6やニコチン酸などの服用によって軽快した症例が報告されています。

ビタミンB6の欠乏・相互作用で起こる症状

ビタミンB6 欠乏症

■ビタミンB6欠乏症・相互作用■
赤血球のヘモグロビンの合成に関わるため、ビタミンB6欠乏により血色素減少症、(小赤血球性)貧血を起こします。ビタミンB6が欠乏すると動脈硬化性血管障害の原因となる等の報告があります。ビタミンB6が欠乏すると食欲不振、妊娠時の嘔吐などの原因になります。

ビタミンB6欠乏により麻痺発作、多発性神経炎が起きやすくなります。

神経伝達物質(セロトニン、タウリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンやアミノ酪酸)の合成に関わるため、ビタミンB6欠乏によりセロトニン産生が低下し、異常興奮性、憂うつ症、精神錯乱などを起こしやすくなると言われています。

ビタミンB6は免疫機能維持に重要な核酸合成に関わるため、免疫応答に影響を与え、欠乏すると免疫低下やアレルギーを招くと考えられます。

ビタミンB6欠乏により腎結石が増加するという報告があります。

ビタミンB6欠乏により湿疹、脂漏性皮膚炎などを起こしやすくなります。

ビタミンB6欠乏により乳児痙攣を起こす等の報告があります。

ビタミンB6欠乏により歯石が増加する、虫歯になりやすくなる、口内炎、口唇口角亀裂、口角症、舌炎にかかりやすくなるという報告があります。

ビタミンB6との併用により、レポドパ(パーキンソン病治療薬)の作用が減弱することがあります。ビタミンB6は、レポドパ脱炭酸酵素の補酵素ですが、併用によって末梢におけるレポドパの脱炭酸が促進され、脳内作用部位に到達するレポドパの量が減少するためと考えられています。

イソニアジド(結核治療薬)の服用により、ビタミンB6が欠乏することがあります。これは、ビタミンでの尿中排泄促進や活性化阻害が起こるためと考えられます。イソニアジドの長期服用により、末梢神経炎(手足の先端部のしびれ、痛みなど)がみられた場合は、ビタミンB6の補給も考慮します。

抗生物質の長期服用により、腸内細蘭が抑制され、ビタミンB6などのビタミンB群が欠乏することが考えられます。

テオフィリン(キサンチン系気管支拡張薬)、エストラジオール(エストロゲン製剤)、フェノバルビタール・フェニトイン(抗てんかん薬)などで、ビタミンB6の血中濃度が低下するとの報告があります。

ビタミンB6の代謝異常によると思われる光線過敏症が報告されています。

摂取アルコール、経口避妊薬により必要要量が増大します。

ビタミンB6の過剰摂取・副作用

ビタミンB6 過剰摂取 副作用

ビタミンB6の過剰摂取による副作用などの危険性は以下の通りです。

■ビタミンB6の過剰摂取、副作用一覧■

ビタミンB6の急性毒性は低く、1g/kgまでは優れた耐容性を示します。

しかし、過剰摂取により知覚神経障害、末梢感覚神経障害、筋肉脆弱、精巣萎縮、精子数減少、光過敏症、吐き気、嘔吐、など腹痛、食欲不振、頭痛、錯感覚、眠気、血中AST(SGOT)の上昇、血中の葉酸濃度減少、皮膚反応やその他のアレルギー反応、乳房の痛みと膨張感などを起こすことがあります。

月経前症候群や関連した機能異常の治療にビタミンB6を使用(長期にわたり500mg投与)したとき、神経毒性や光過敏症が少数例ありますが、250mg以下であれば大部分の人にとって安全です。

2~40ヶ月にわたりピリドキシンを1日2000~4000mg服用して末梢性感覚性神経症になったという報告、知覚神経障害は300~500mgの連用で起こったという報告があります。

1日1000mgのビタミンB6の長期連用でシュウ酸腎臓結石発生の危険性が示唆されています。経口で過剰に長期間摂取した場合、おそらく安全でないと考えられます。最も低い場合では50mg/日(通常は2g以上)の摂取を2ヶ月以上続けた場合、感覚神経障害のリスクが上昇します。

月経前症候群(PMS)、小児痙攣発作、つわりに有効ですが、長期のビタミンB6過剰摂取は神経障害を起こします。

妊娠中のビタミンB6経口摂取は、1.9mgという推奨摂取量のレベルであればほぼ安全です。しかし、妊娠中の過剰な経口摂取は安全でないと考えられます。

高濃度ピリドキシンの過剰な摂取は新生児の発作と関連があるようですが、授乳中の過剰量の摂取に関しての安全性に関しては十分な情報が得られていません。

アミオダロン(抗不整脈薬)とビタミンB6の併用は、光過敏症のリスクを上昇させる可能性があります。

レポドパ(パーキンソン病薬)やフェニトイン・フェノバルビタール(抗てんかん薬)とビタミンB6の併用は、これらの薬剤の血中濃度を減少させるおそれがあり、抗生物質、エストロゲン、ヒドララジン、テオフィリン、イソニアジドなどいくつかの医薬相互作用品はビタミンB6の吸収および血中濃度に影響を与えることが知られています。

500〜6,000mgのビタミンB6長期摂取は末梢神経障害を起こし、中枢神経系に毒性を与える可能性があります。発症の徴候は、徐々に進行する感覚性運動失調と下脚末端の位置感覚ならびに振動感覚の機能障害を認め、これらの症状は発症するのに数年かかりますが、軽度の神経障害を50mg/日程度の連日摂取で起こす患者もいます。

晚発性皮膚ボルフィリン症に似た皮膚・病変が、2〜4g/日のピリドキシンを2〜4年間服用した例の患者で報告されています。

多量のビタミンB6急性投与はプロラクチンの分泌を減少させ、授乳中の女性での母乳量の低下を起こします。

研究・エビデンス

研究 エビデンス

研究①慢性腰痛

慢性腰痛患者に対する2件のランダム化比較試験から、非ステロイド性抗炎症薬とビタミンB6との併用は抗炎症薬単独よりも有効であることが見出されました。

研究②喘息

喘息でテオフィリンを投与されている患者においてピリドキシン摂取が症状を向上させる可能性がありますが、まだ矛盾する事実も多いです。

研究③高ホモシステイン血症

49名の高ホモシステイン血症患者を対象とした8週間のランダム化比較試験の結果、1日に葉酸0.5mgとビタミンB6100mgを併用摂取したところ、空腹時および負荷後の血中ホモシステイン濃度が有意に低減しました。

研究④結石

再発性の結石患者16名に酸化マグネシウム300mgと塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)10mgを摂取させた試験の結果、シュウ酸の尿中排泄が徐々に減少し、シュウ酸カルシウムのリスク指標が有意に低下しました。また、再発性の結石患者12名にピリドキシンを1日に250〜500mg摂取させたところ、18ヶ月後には尿中のシュウ酸濃度が摂取前に比べて有意に低減し、摂取期間中8名では新たな結石を形成せず、3名は既にあった結石の大きさが若干増加し、1名で新たな結石が形成しました。

研究⑤つわり

59名の妊婦を対象とした3日間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、ビタミンB6を25mg含む錠剤を8時間おきに摂取したところ、摂取前のつわりの吐き気の症状が重かった被験者において有意に吐き気が抑えられましたが、症状が軽度〜中等度あった被験者では有意差は認められませんでした。他の試験では、妊娠17週目未満の女性342名を対象とした5日間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、塩酸ピリドキシンを1日30mg摂取したところ、摂取前に比べてつわりが有意に抑えられました。

研究⑥遅発性ジスキネジー

統合失調症である遅発性ジスキネジー患者15名を対象とした4週間のランダム化比較試験(二重盲検、クロスオーバー)の結果、摂取3週間目には症状スコアが有意に改善しました。

研究⑥PMS

PMSに対する効果は信頼性が低いランダム化比較試験を統合したレビューからは、全般的な症状に対するビタミンB6の有益性が示されましましたが、3件のランダム化比較試験では、ビタミンB6の有益性について相反する科学的根拠が見つかりました。

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