カルニチン(L-カルニチン)の効果効能、副作用 ダイエットや循環器疾患に効く?

カルニチン ダイエット 循環器疾患

カルニチン(L-カルニチン)の概要

L-カルニチン 概要

カルニチン(carnitine、L-carnitine)は昆虫の成長因子として見つかったアミノ酸の一種ですが、脂肪の代謝に必須であることがわかり、肥満が問題となっている現代社会においては注目される成分で、条件付き必須栄養とみなす考え方もあります。ダイエットを目的とするサプリメントに用いられることもあります。

その他にも循環器系、概要甲状腺系への生理作用があることが報告されています。カルチニンにはD-カルニチンとL-カルニチンがあり、効果があるのはL-カルニチンです。D-カルニチンはL-カルニチンとの競合でL-カルニチン欠乏を引き起こすことがあります。

食品中には、羊肉、牛肉、レバー、牛乳、イーストなどの動物性食品に含まれ、植物性食品にはほとんど含まれていません。

L-カルニチンは医薬品としても承認されており、現在も使用されています。食品としてのL-カルニチンの使用にあたっては、米国では1日摂取許容量(ADI)が20mg/kg/日と評価されていることや、スイスでは1,000mg/日を摂取の上限としていることなどから、過剰摂取しないよう配慮することが求められています。

医療用医薬品では、塩化カルニチンが消化機能賦活亢進薬(注射)として、塩化レポカルニチンがミトコンドリア機能賦活薬(プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症の改善)として用いられます。一般用医薬品では、胃腸薬やドリンク剤などに配合されています。

カルニチンを使った医薬品例

医療用医薬品:エルカルチン錠、アベダイン液(塩化カルニチン)
一般用医薬品:ソルマック

カルニチンの作用メカニズム

■カルニチンの作用■
カルニチンは脂肪の代謝に重要な役割をもち、脂肪酸がミトコンドリア膜を通過するのに必要な物質です。アシル酸の細胞膜透過の輸送に携わり、ミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸のβ酸化を可能にします。また、肝や腎でのケトン体の生成に必要とされます。小腸で速やかに吸収され、腎で排泄されますが、通常90%以上が再吸収されます。カルニチンは肝と腎においてリジン、メチオニンからつくられます。プロピオニル-L-カルニチンは自然に産生される誘導体です。

カルニチン(L-カルニチン)の効果効能

カルニチン 効果 効能

カルニチンの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。

■カルニチンの効果効能一覧■

「コレステロール、高血圧、狭心症、心不全、心筋梗塞、末梢血管疾患、間欠性跛行、胃酸分泌、食欲、レット症候群、生殖、甲状腺、糖尿病、利尿、脂質代謝、筋萎縮症、筋力低下、下腿潰瘍、体重、体脂肪、早産児、ダイエット」

慢性安定狭心症患者の運動耐性向上、うっ血性心不全患者の症状改善、心筋梗塞発作後の合併症や死亡率の低減にカルニチンの有効性、効果を示唆する報告があります。

カルニチンは末梢血管疾患、間欠性跛行に用いられる、コレステロールの増加を抑制し、血管壁への沈着を防ぐ高脂血症に用いられる、血圧降下効果がある等の報告があります。

カルニチンは胃液分泌を促進する効果がある、食欲不振に効果がある等の報告があります。

カルニチンはレット症候群(ほとんど女児のみに発症する進行性神経疾患)に効果があるとの報告があります。

カルニチンは生殖にも関係がある可能性があるとの報告があります。

甲状腺機能亢進症に対するカルニチンの有効性、効果を示唆する報告があります。

カルニチンは糖尿病に効果があるとの報告があります。

カルニチンには利尿効果があるとの報告があります。

カルニチンは薬剤による筋疾患に効果がある、下腿潰瘍に効果がある等の報告があります。

早産児の脂質利用能を高める目的にカルニチンの有効性、効果を示す報告があります。

カルニチンは脂肪組織から放出される遊離脂肪酸の肝臓や筋肉組織での酸化に関わり、脂肪酸の利用に必要である等の報告があります。

カルニチンはグリセリドと脂肪酸の燃焼を促進し、効率よく体脂肪を燃やし、体脂肪を蓄積しない、動物実験ではカルニチンの投与と運動の併用により、体重・体脂肪ともに増加を抑制した、厳格なベジタリアンやダイエット中の人が栄養補助剤として摂取している等の報告があります。

カルニチン欠乏症

人では栄養上のカルニチン欠乏はないですが、ある種の筋萎縮症では欠乏症が認められ、筋細胞に脂肪の異常蓄積が起こる、欠乏初期には低グリシン血症を伴い、筋原線維への脂質の蓄積が進行し筋力低下をもたらす可能性があります。男性より女性、また肥満気味の人で不足しがちといわれています。

カルニチン欠乏症によるミオパチーは、筋衰弱が最もよい治療指標となります。過剰な脂肪が筋組織に認められます。原発性の全身性カルニチン欠乏症はReye症候群に似ており、高アンモニア血症、低血糖、低プロトロンビン血症、代謝性と考えられる脳症を起こします。

カルニチンの体内利用率と吸収を低下させる要因は、脂肪を蓄積させるような疾患、有機酸尿、糖尿病、筋ジストロフィー、甲状腺機能亢進症、先天性カルニチン欠乏症、蛋白質吸収不全、コリン欠乏症、腎疾患、血液透析、蛋白水解物の経腸栄養などが挙げられます。

カルニチンの副作用・毒性

カルニチン 副作用

カルニチンの副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。

■カルニチンの副作用・毒性一覧■
カルニチンは適切に用いれば経口で副作用が少なく、ほぼ安全であるといわれています。

カルニチンは授乳中でも経口でほぼ安全と考えられます。母乳、調製乳に添加しても副作用は報告されていません。

カルニチンの経口、静注の副作用としては、吐き気、嘔吐、胸焼け、急激な腹痛、胃炎、下痢、体臭、痙攣が知られています。

D-カルニチンはL-カルニチン欠乏症を引き起こすことがあるので、安全上の注意が必要です。

コエンザイムQ10との併用で相乗効果があり、合成にビタミンCが必須です。

アセノクマロールとカルニチンの併用で、その抗凝血効果を強めることがあります。

ヒトでは脂質代謝の異常をきたした場合にはカルニチンの生合成が低下するため摂取する必要があります。

研究・エビデンス

エビデンス

研究①心筋梗塞とカルニチン

急性の心筋梗塞の疑いがある101名を対象とした28日間のランダム化比較試験の結果、カルニチンを1日2g摂取した群において梗塞部の大きさが有意に減少、左心室肥大と不整脈が改善しました。また、472名を対象とした1年間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、カルニチン1日9gを始めの5日間静脈注射した後12ヶ月間1日6g摂取した群は、左心室の大きさが有意に減少、拡張末期容量、収縮末期容量も有意に減少しました。

研究②甲状腺機能亢進症とカルニチン

甲状腺機能亢進症の女性50名を対象とした6ヶ月間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、カルニチンを1日2gあるいは4g摂取したところ、いずれの投与量でも症状の改善あるいは進行が予防でき、骨石灰化に効果が認められました。

研究③超低体重児とカルニチン

43名の超低体重児を対象としたランダム化比較試験の結果、カルニチンを1日に50mmol/kg非経口投与した群はそうでなかった群と比べて、ケトン生成における異常が抑制され、生後2週間の体重増加も大きかったとのことです。

研究④跛行とカルニチン

跛行患者485例にプロピオニル-L-カルニチン(1g、1日2回)を12カ月間投与した結果、歩行距離が投与前値で250m以下の例でのみ、最長歩行距離(最初の跛行時の距離ではない)が有意に改善されました。

研究⑤狭心症とカルニチン

安定した運動負荷狭心症患者46例にプロピオニル-L-カルニチン(1,500mg/日、6週間)投与群と、ジルチアゼム(180mg/日、3週間、続いて360mg/日、3週間)投与群を比較した結果、どちらの投与群も、運動時間、ST時間の短縮、最大運動でのST下降、狭心症の発作数を改善しました。ジルチアゼム投与群のみが安静および最大心拍数、拡張期血圧、RPPを改善しました。

研究⑥アルツハイマー病とカルニチン

アルツハイマー病患者130例にアセチル-L-カルニチン(2g/日)を1年間投与した結果:blessed dementia scale(日常生活における認知機能をアンケート式手法で調べて認知の尺度とする方法)を行ったところ、進行度を抑えたとのことです。

研究⑦肥満・ダイエットとカルニチン

100名の肥満者を対象に、食事制限と運動を併用した投与において、対照群に比較して、LDL、血糖値、血圧が血管系有意に低下しました。また、18名の肥満者に対して栄養指導と運動の併用で対照群に比較してBMIが有意に減少しました。