コエンザイムQ10(CoQ10)の概要
コエンザイムQ10(CoQ10)はダイエットや健康維持、美肌などを目的としたサプリメントに配合されています。化粧水やクリーム、パック、入浴剤などに用いられることもあります。
コエンザイムQ10(CoQ10)は体内でも合成される脂溶性のビタミン様物質で、ミトコンドリア内でエネルギー産生に携わる他、脂溶性の抗酸化物質としても働きます。
CoQ10は、日本では医薬品として扱われてきましたが、その幅広い有用性から、食品材料としての使用が許可された物質です。2001年、コエンザイムQ10は、食薬区分の変更により、「医薬品的効能効果を標榜しない限り、医薬品と判断しない成分本質(原材料)」とされ、食品成分としての利用が可能となりました。
医療用医薬品では、代謝性強心薬として、基礎治療施行中の軽度および中等度のうっ血性心不全症状に用いられます。一般用医薬品では、エネルギー代謝改善型循環器官用薬として、軽度な心疾患により日常生活の身体活動を少し超えたときに起こる動悸・息切れ、むくみの改善に用いられます。
コエンザイムQ10(CoQ10)を使った医薬品例
・医療用医薬品:ノイキノン
・一般用医薬品:ユビテンS
コエンザイムQ10(CoQ10)を多く含む食品
レバー、いわし・さば・ぶりなどの魚類、緑黄色野菜などに比較的多く含まれています。食品(肉、家禽)からのコエンザイムQ10摂取量はヒトの体内量の1/4にまで達します。
コエンザイムQ10の作用
コエンザイムQ10(CoQ10)の効果効能
コエンザイムQ10の効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「抗酸化、狭心症、心不全、虚血性心疾患、脳出血、動脈硬化、高血圧、免疫、精子、不妊、糖尿病、筋ジストロフィー、運動能カ、筋疾患、脱毛症、酸素利用、歯槽膿漏、臓器移植、慢性疲労症候群(CFS)、延命、パーキンソン病」
コエンザイムQ10は経口で、うっ血性心不全に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
コエンザイムQ10の高血圧に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
コエンザイムQ10は脂質の抗酸化効果を持つので、細胞膜を酸化から保護し、ビタミンEを節約する効果があるとの報告があります。
コエンザイムQ10は医薬品として狭心症、心不全、虚血性心疾患や脳出血の治療に使われています。心筋梗塞に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
コエンザイムQ10は薬として大量に投与すると、動脈硬化や高血圧(メカニズムはステロイドホルモンのアルドステロンへの拮抗効果による)にも有用とされるとの報告があります。
ビタミンEとコエンザイムQ10の併用で、初期のパーキンソン病患者の機能障害の進行を遅らせたとの報告があります。
コエンザイムQ10は免疫細胞や白血球の効果を高める、免疫増強効果がある等の報告があり、HIV/AIDS患者の免疫機能を向上させるのに経口で、おそらく有効と考えられます。
コエンザイムQ10は精子を活発にする、男性の不妊症に対して効果がある等の報告があります。
コエンザイムQ10は糖質をエネルギーに変えて血液中の糖分を減らすことから、糖尿病の治療にも使われるとの報告があります。
筋ジストロフィーの治療に対するコエンザイムQ10の有効性、効果を示唆する報告があります。
コエンザイムQ10は筋ジストロフィーの症状改善に利用される、運動能カと密接な関わりがある、スタチンによる筋疾患を予防する目的で用いられる、ワルファリンによる脱毛症に対して経口で効果がある等の報告があります。
コエンザイムQ10は酸素の利用効率を高める効果があるとの報告があります。
コエンザイムQ10は乳がんに用いられるとの報告があります。
コエンザイムQ10は歯槽膿漏にも効果があるとされるとの報告があります。
コエンザイムQ10は臓器移植の際の心臓、腎臓、肝臓などの臓器を摘出時の虚血状態に対し強くする効果があるという報告があります。
コエンザイムQ10は慢性疲労症候群(CFS)に効果がある、延命目的に使用される等の報告があります。
コエンザイムQ10はまれな糖尿病の一種であるミトコンドリア遺伝子の異常による糖尿病(MMID)における進行性インスリン分泌障害、運動不耐、聴カ損失を防ぐ可能性が示唆されています。また、進行した乳がんに対して、手術や化学療法、抗酸化物質、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸と併用でコエンザイムQ10は治療を助ける可能性があります。
コエンザイムQ10はワルファリン使用による脱毛症に対し効果がある可能性を示唆する報告があります。
コエンザイムQ10の副作用・毒性
コエンザイムQ10の副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
経口で適切にコエンザイムQ10を使用する場合、ほぼ安全であり、関連する研究では、有意な毒性は報告されていません。
経口でコエンザイムQ10は一般的に副作用の出にくい耐容量が高い物質です。副作用報告は胃腸病患者に限られているとの報告もあります。
副作用として、胃部不快感、食欲減退、吐き気、下痢、過敏症、発疹などがみられることがあります。
臨床研究では副作用はほとんど認められていないですが、軽度の副作用は引き起こす可能性があります(胃の不調が0.39%、食欲不振が0.23%、吐き気が0.16%、下痢が0.12%の人で見られたという報告があります)。
1日300mgを超える量を摂取する場合、コエンザイムQ10は乳酸脱水素酵素(LDH)などの肝機能テスト項目の無症候性の上昇や、血清グルタミン・オキザロ酢酸転移酵素(SGOT)の軽度の上昇を招く可能性があります。しかし、症状にあらわれるような肝臓病は報告されていません。
コエンザイムQ10と高血圧の薬との併用は、コエンザイムQ10が血圧に影響を与える可能性があり、効果が増強される可能性があるため注意を要します。
コエンザイムQ10はメナキノン(ビタミンK)様作用があるためワルファリンの抗凝固効果が薄れる可能性があります。
医薬品としては1日30mgの用量で承認されていますが、サプリメントなどでは1日の摂取量か30mgを超える商品も少なくなく、中には60mg、100mgの商品もあります。
コエンザイムQ10含有食品の摂取によると思われる消化器症状(嘔吐、下痢など)が報告されたことから、厚生労働省は2003年11月、(財)日本健康・栄養食品協会に規格基準の設定の検討を依頼。2005年5月に1日摂取目安量の上限値を300mg以下としたい」との報告が出されました。
ミトコンドリア脳症の35歳の女性で、コエンザイムQ10とブロマゼパムの服用でじん麻疹がみられました。皮膚テストではコエンザイムQ10、ブロマゼパムとも陰性で、食餌誘発試験ではコエンザイムQ10で陽性を呈しましたが、ブロマゼパムでは陰性でした。この患者の治療にコエンザイムQ10は必要と考えられ、速やかな脱感作療法が行われ、効果的に脱感作されました。
ワルファリン使用の72歳の女性に、コエンザイムQ10の定期服用開始後にワルファリンへの反応性の低下が認められました。コエンザイムQ10の使用中止でワルファリンへの反応性は戻りました。
パーキンソン病80人の16ヶ月300mg、600mg、1200mg/日の摂取においてプラセボ群と有意な副作用は認められなかったとのことです。
研究・エビデンス
研究①CoQ10と高血圧
高血圧患者59例のうち、30例にコエンザイムQ10(60mg、1日2回)を8週間投与し、29例にプラセボとしてビタミンB群複合剤を投与した結果、コエンザイムQ10投与群ではプラセボ群より収縮期および拡張期血圧を有意に低下させました。
研究②CoQ10とうっ血性心不全
641名のうっ血性心不全患者を対象とした1年間の比較試験の結果、CoQ10を1日当たり2mg/kg摂取したところ、入院を要するほど症状が悪化した人数がプラセボ群と比べて有意に少なく、肺水腫や心臓喘息などの所見も少なかったといいます。また、うっ血性心不全とCoQ10の摂取との相関を調べた8件の試験では、CoQ10を摂取した患者は1回拍出量および心拍出量、駆出率、心係数など、心臓から拍出される血流を示す値が改善していたとのことです。
研究③CoQ10とエイズ
14名のエイズ患者が(CoQ10)を摂取したところ、T4/T8比が改善したとの試験があります。
研究④CoQ10と2型糖尿病
74名の2型糖尿病患者を対象とした12週間のランダム化比較試験の結果、100mgのCoQ10を1日2回摂取した群は、収縮期血圧、拡張期血圧およびHbAlcが有意に低下しました。
研究⑤CoQ10と筋ジストロフィー
7〜69歳の筋ジストロフィー患者12名を対象とした試験、および15名の患者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験でCoQ10を1日100mg摂取した結果、身体能カが改善されました。
研究⑥CoQ10と心筋梗塞
144名の心筋梗塞患者を対象とした1年間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、CoQ10を1日当たり120mg摂取したところ、ヒトでのプラセボ群と比べて発作などの回数が有意に抑えられました。
研究⑦CoQ10とパーキンソン病
薬物治療を受けていない初期のパーキンソン病患者80名を対象とした16ヶ月間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、CoQ10を1日当たりの量として300、600、1200mgのいずれか摂取したところ、パーキンソン病総合評価尺度(Unified Parkinson Disease Rating Scale)のスコアが改善し、1200mg摂取群ではプラセボに対して有意差が認められました。