もくじ
フェニルアラニンの概要
フェニルアラニン(phenylalanine)は必須アミノ酸で、タンパク質の構成材料となるほか、主に肝臓でチロシンに変換された後、臓器で利用されます。
フェニルアラニンは食品中では、タンパク質の構成アミノ酸としてプロセスチーズ(1200mg/100g)、ほんまぐろ赤身(1000mg/100g)、納豆(870mg/100g)などに多く含まれます。
フェニルアラニンは多くの蛋白質含有食品に含まれています。フェニルアラニンとチロシンの1日平均摂取量は、10.4g(菜食主義者では7.0g)です。
医療用医薬品ではアミノ酸製剤、栄養剤などにフェニルアラニンが配合されています。一般用医薬品では滋養強壮薬、ドリンク剤などに配合されています。
アミノ酸の補給を目的としたサプリメント、飲料などにもフェニルアラニンは用いられています。食品添加物(調味料、強化剤)として用いられることもあります。
フェニルアラニンが含まれる医薬品例
医療用医薬品:アミノレバン
—般用医薬品:アニマリンL錠
フェニルアラニンの作用
フェニルアラニンの効果効能
フェニルアラニンの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「血圧、興奮、神経伝達物質、ノルアドレナリン、ノルェピネフリン、ドーパミン、鎮痛、抑うつ、記憶カ、精神高楊、空腹感、パーキンソン病、性的興奮、肝機能、筋肉、関節炎、アルコール離脱」
フェニルアラニンは血圧を上昇させるとの報告があります。興奮性の神経伝達物質ドーパミン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)に変換されます。
DL-フェニルアラニンとして、脳内でモルヒネのような役割を果たすエンドルフィンの産生と活性を高めることで、外傷、骨関節炎、慢性関節、リウマチ、腰痛、片頭痛、神経痛、筋肉の痙攣、手術後の痛みなどの慢性的な神経系痛みの鎮痛薬として使われるとの報告があります。
ビタミンB12とともにフェニルアラニンを摂取すると、神経症状に効果がある、不足すると記憶カが減退する、精神を高揚させる、空腹感を減らす等の報告があります。
フェニルアラニンには性的興奮を高める効果があるとの報告があります。
フェニルアラニンは肝機能を亢進するとの報告があります。
関節炎、リウマチ性関節炎に用いられ、ビタミンB12とともにフェニルアラニンを摂取すると、筋肉の症状に効果がある等の報告があります。
フェニルアラニンの白斑に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
フェニルアラニンはアルコール離脱症状に用いられるとの報告があります。
フェニルアラニンはうつ病の治療に対して用いられるとの報告があります。
フェニルアラニンがパーキンソン病に対してD-フェニルアラニンが有効性、効果を示唆されています。
フェニルアラニンの欠乏・不足で起こる症状
フェニルアラニンが欠乏すると、抑うつ傾向になりやすいといいます。
低フェニルアラニン濃度(25mmol以下)は、食欲不振を引き起こし、成長や知能の発達を遅らせるという報告があります(チロシンはある程度はフェニルアラニンの代わりになる)。
フェニルアラニンが欠乏すると、最初に血中と尿中のフェニルアラニン濃度が低下します。場合によって嗜眠、食欲不振、成長の遅れが発現します。
年齢の高い小児では、血中のアラニンが増加し、13-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸の酸血症となります。
第2段階では、チロシン濃度が低いと筋蛋白質の分解によりフェニルアラニン濃度が上昇する可能性があります。他のアミノ酸に対する分岐鎖アミノ酸の比率が増える。湿修がしばしば発現し、腎細管の吸収能が低下するので、アミノ酸尿となります。
第3段階では、アミノ酸濃度は低下し(蛋白質合成の低下)。貧血症状を示します。毛髪はまばらに、骨密度は低下します。欠乏症状が改善せずに進行すると死に至ることもあります。
フェニルアラニンの副作用・毒性
フェニルアラニンの副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
フェニルアラニンを過剰に摂ると血圧が高くなりすぎる可能性があります。
L-フェニルアラニンはある種の遺伝的素因があるヒトにおいて、血圧を上昇させたり、発作のリスクを増加させたりするというデータがあります。
血圧を上げるため、妊娠中の女性、皮膚がん、フェニルケトン尿症のヒトはフェニルアラニン摂取を制限します。
食品中に含まれる量を摂取するのであればほぼ安全です。治療目的で用いる量でも経口で安全です。
妊娠中・授乳中は、フェニルアフニン代謝か正常であれは、食品中に含まれる量の摂取はほぼ安全ですが、治療目的で用いる童における安全性については十分なデータがないので使用を避けましょう。
統合失調症の人において遅発性ジスキネジーを悪化させる可能性があるので注意してフェニルアラニンを使用するようにしましょう。
レポドパ(L-ドーパ)を用いているパーキンソン病患者において、中性アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン)は振戦(ふるえ)、痙攣、オン-オフ症候群を悪化させます。
神経遮断薬とL-フェニルアラニンとの併用で、単極性うつ病患者の遅発性ジスキネジーを発症、増悪させることがあります。
理論的には非選択的モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との併用で、高血圧症のリスクが増加することが考えられます。
アルカプトン尿症、フェニルケトン尿症、チロシン血症、チロシン尿症患者はフェニルアラニンを避けたほうがよいといいます。
ハーブ、サプリメント、食品とフェニルアラニンの相互作用は報告されていません。
フェニルアラニンの研究・エビデンス
研究①血中フェニルアラニン濃度の上昇は、フェニルケトン尿症(PKU)の最も重要な因子です。白斑の治療におけるフェニルアラニンの効果を示唆するエビデンスはわずかです。