ロイシンの概要
ロイシン(leucine)は必須アミノ酸のひとつで、1日の必要量がアミノ酸の中で最大です。
ロイシンを含有する食物が多いため、通常欠乏することは少ないです。肝臓の保護効果があるほか、分岐鎖アミノ酸のひとつで、筋肉強化効果が示唆されており、スポーツやフィットネス栄養の観点から注目度が高くなっています。
食品中では、タンパク質の構成アミノ酸として、プロセスチーズ(2300mg/100g)、かつお生(1900mg/100g)、牛肉サーロイン赤身(1800mg/100g)などに多く含まれます。
ロイシンが使われている製品の例
肝不全用アミノ酸製剤・高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤・腎不全用アミノ酸製剤・総合アミノ酸製剤・総合アミノ酸製剤グリセリン配合剤の成分としてロイシンが使用されます。
- リーバクト顆粒(味の素・味の素ファルマ)
- キドミン(大塚製薬)
- アミノレバンEN(大塚製薬)
- アニマリンL錠(大正製薬)
ロイシンの作用
BCAAの疎水性は蛋白質の構造形成に重要です。またBCAAは感染症への反応に影響を与えます。BCAAは筋蛋白質の約1/3を占め、また他の組織の重要な構成成分となっています。ロイシンは筋肉での蛋白質生合成を促進します。ロイシンの血漿中での半減期は5日です。
分岐鎖アミノ酸は筋肉や心臓、脳、肝臓そしておそらく他の組織が直接利用しうる有効なエネルギー源であり、分岐鎖アミノ酸の投与により、筋肉タンパク質の分解が減少します。
比較的強度の高い運動に対して分岐鎖アミノ酸はホルモン分泌を変化させ、運動中の筋肉タンパク質分解を抑制します。
大部分の分岐鎖アミノ酸は骨格筋で代謝され、その窒素はグルタミン及びアラニンとして放出されます。
ロイシンの効果効能
ロイシンの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
慢性の肝性脳症に対してロイシンの有効性、効果を示唆する報告があります。
ロイシンが集中カ向上のために用いられているとの報告があります。
バリン、イソロイシンなどとともに分岐鎖アミノ酸としてスポーツ時に摂取することで、オーノ時のグルタミン酸塩放出による免疫力低下を抑制すると考えられているとの報告があります。
肝臓を守る、肝機能を高める、分岐鎖アミノ酸の投与は肝不全の患者の栄養管理にロイシンが有効であり、潜在性の肝性脳症の長期治療に有効と考えられます。
分岐鎖アミノ酸の投与は芳香族アミノ酸の血管脳関門の通過を抑制するため、肝性脳症の症状改善にロイシンが役立つとの報告があります。
ロイシンは筋肉のタンパク質漏出を減少させタンパク合成を増加させる、人体ではあらゆるアミノ酸がタンパク合成を増加させるが、ロイシンが最もその能力が高いと思われる等の報告があります。
運動中の筋肉衰弱を低減する目的に対してロイシンの有効性、効果を示唆する報告があります。
分岐鎖アミノ酸摂取がトレーニング時にパフォーマンスをあげる、あるいは筋肉量を増すといった効果については、今のところ十分な証拠はありません。
長期療養中の筋肉疲労を低減する目的で用いられるとの報告があります。
運動能力を高める効果に対して無効であることを示唆する報告もあります。
ロイシンの副作用・毒性
ロイシンの副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
ロイシンの経口摂取は短期間、適切に用いればおそらく安全と考えられます。臨床試験では1、2週間〜6ヶ月まで安全に摂取できたと報告されています。
妊娠中、授乳中の安全性については十分なデータがありません。
アルコール依存症患者において肝生脳症が1例報告されています。この報告によると、分岐鎖アミノ酸使用の中止とともに回復し、再使用とともに再発しました。
理論的には、分岐鎖アミノ酸とレポドパ(L-ドーパ)の併用で、小腸と脳におけるレポドパの輸送と競合し、効果を弱めることが考えられます。
ロイシンとハーブやサプリメント、食品との相互作用は報告されていません。
ロイシンの研究・エビデンス
ロイシンの研究①
多施設の64名の慢性肝性脳症患者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験の結果、分岐鎖アミノ酸を0.24g/kg/日摂取した群は、3ヶ月後に門脈大循環性脳症の指標が有意に改善しました。
安定性の肝硬変と潜伏性脳症を持つ患者17名を対象とした、8週間のクロスオーバー試験の結果、分岐鎖アミノ酸摂取群は精神運動性の障害が改善し、自動車の運転能力が向上しました。
肝硬変と潜伏性脳症を持つ患者22名を対象とした1週間のクロスオーバー試験の結果、分岐鎖アミノ酸を0.25g/kg/日摂取した群は、精神運動機能、注意カ、実用的知能が改善しました。
7名の自転車選手が参加した試験において、サイクルエルゴメーターを用いた運動時に分岐鎖アミノ酸を摂取しても、摂取しない場合と比べて運動能力に有意差が認められなかったとのことです。