もくじ
ビタミンC(アスコルビン酸)の概要
ビタミンC(別名アスコルビン酸)(英 L-ascorbic acid)は壊血病の予防因子として発見された水溶性ビタミンで、多くの哺乳動物では体内で合成可能であるのに対し、ヒトは合成できないため外からの摂取が必須です。
体内のタンパク質の約30%を占めるコラーゲンの合成に不可欠なため、正常な毛細血管や骨の維持に重要です。また腸管での鉄の吸収を高めたり、免疫機能を高めるといわれています。近年その抗酸化作用により様々な疾病予防の効果も期待されています。
水溶性のため摂りすぎの心配が少なく、またストレスや喫煙によっても消費されるため必要な人も多く、錠剤・カプセルや栄養強化食品として摂取する割合が多くなっているビタミンです。
ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用をもつ栄養素です。サプリメントや飲料、菓子などに配合されていることも多く、最近は美白をうたった化粧品にも用いられています。
食品添加物(酸化防止剤、膨張剤、強化剤)として用いられることもあります。
栄養機能食品の栄養成分のひとつであり、24mgから1000mgの含有で、「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化効果を持つ栄養素です。」の表示が可能です。
アメリカでは「がんは様々な要因によって発症します。低脂肪で果物、野菜(食物繊維、ビタミンA、ビタミンCに富む低脂肪食品)を多く含む食事は、ある種のがんになるリスクを低減するかもしれません。」の表示が認められています。
ビタミンC(アスコルビン酸)を多く含む食品
ビタミンCは多くの果物や野菜、とくに柑橘類、ローズヒップ、クロスグリ、クランベリー、メロン、マンゴー、イチゴ、キウイ、トマト、アスパラガス、アブラ菜科の野菜、コショウ、サヤエンドウ、サツマイモなどに含まれています。
含有量の例としては、赤ピーマン(170mg/100g)、ブロッコリー(120mg/100g)、いちご(62mg/100g)などです。
ビタミンCは酸性下で安定ですが、加熱、中性〜アルカリ性では不安定です。食物中のビタミンC含量は季節、食品の流通、加工法、調理法などにより変動します。野菜は、ゆでると50〜80%のビタミンCが失われます。
【1日摂取目安量】
上限値:1,000mg
下限値:24mg
ビタミンC(アスコルビン酸)を使用した医薬品
医療用医薬品ではビタミンC製剤として、ビタミンC欠乏症(壊血病、メルレル・バロー病)の治療および予防、ビタミンCの需要が増大し、食事からの摂取が不十分な場合の補給、ビタミンCの欠乏または代謝障害が関与すると推定される疾患(毛細管出血、薬物中毒、副腎皮質機能障害、骨折時の骨基質形成・骨癒合促進、肝斑・雀卵斑・炎症後の色素沈着、光線過敏性皮膚炎)などに用いられます。栄養剤にも配合されています。
一般用医薬品ではビタミンC製剤、ビタミンEC製剤、栄養剤、ドリンク剤、総合感冒薬、貧血治療薬、点眼薬などに配合されています。
医薬品の例
医療用医薬品:ビタミンC散
一般用医薬品:ハイシーL
ビタミンCの効果効能
ビタミンCの効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「高コレステロール、抗酸化、血圧、脂質、心臓病、貧血、壊血病、胃粘膜、アルツハイマー病、抑うつ、ヒステリー、精神異常、免疫、白血球、アレルギー、ストレス、コ骨粗しょう症、白内障、加齢黄斑変性、ウイルス、風邪、上気道感染、がん、歯肉色素沈着、疲労」
心臓血管病の一次予防に対するビタミンサプリメント摂取は有益性を示す可能性があり、食事からの摂取は、心臓血管病の死亡率を減少させるのにおそらく有効と考えられます。
ビタミンCはコレステロールの体内での合成を阻害する一方、胆汁酸の合成を促進することにより血圧や血中脂質を正常化し、ビタミンEとの併用により、心臓病のリスクを軽減する等の報告があります。
高血圧の付加的治療にビタミンCの有効性、効果を示唆する報告があります。
ビタミンEとビタミンCの併用摂取で、男性のアテローム性動脈硬化症の進行抑制に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
ビタミンCは腸管での鉄の吸収を高め、貧血を予防する効果があるとの報告があります。
ニトログリセリン舌下錠使用患者における硝酸塩耐性を防ぐのに、ビタミンCの有効性、効果を示唆する報告があります。
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収率を上げるのに経口でほぼ有効です。
老人の慢性萎縮性胃炎などピロリ菌感染の場合、胃粘膜において活性酸素が発生し続けているといわれており、ビタミンCやEなどの抗酸化ビタミンが効果的と考えられるとの報告があります。
ビタミンCはビタミンEと合わせて経口で、アルツハイマー病のリスク低減に無効であることを示唆する報告もあります。
ビタミンCはストレスに対して有効である等の報告があります。副腎ホルモンの生成に必須で、ストレスに対抗するとの報告があります。
多くの研究はビタミンCやビタミンEが多く含まれている果物や野菜を豊富に含む食事と神経系の慢性疾患の発症率の低下との関連を示しています。
ビタミンCはインターフェロンの体内産生を高めて免疫を増強する、白血球やマクロファージ、リンパ球抗体の産生を促し、また補体の活性を強めるなど免疫機能を高める、白血球の生理機能に関与する、アレルギー反応を抑制する等の報告があります。
ビタミンCは女性の胆のうの病気のリスク低減に対する有効性、効果を示唆する報告があります。
ビタミンCの食事からの摂取は関節の損傷や変形性関節炎を減少させるのに対して有効であることを示唆する報告があります。
ビタミンCは白内障を予防する(ビタミンEとともに)効果があるとの報告があります。
ビタミンCは中等度および進行した加齢黄斑変性症に対して、亜鉛や他の抗酸化ビタミンとの併用で有効性、効果を示唆する報告があります。
ビタミンCは抗菌・抗ウイルス効果があり、上気道感染症に対して有益である可能性が高い、経口で風邪の治療におそらく有効であろう等の報告があります。一方、経口で風邪の予防に無効であることを示唆する報告もあります。
食事からのビタミンC摂取ががんのリスク、死亡率を低減することを示唆する報告があります。がんの治療に対してはほぼ無効という研究もあります。
ビタミンCは壊血病などの欠乏症の予防と治療に有効である等の報告があります。壊血病の症状はビタミンC投与後、通常2日から3週間で回復します。
心臓血管病や虚血性心疾患での死亡率が、野菜や果物などに富んだ食事を摂り、血中アスコルビン酸濃度が高い男女では、血中アスコルビン酸が低い人に比べて30%ほど低かったが、サプリメントの有効性、効果は不明とのことです。
ビタミンCの欠乏症
ビタミンC欠乏症の4大症状として出血、角化症、抑うつ、血液学的異常が挙げられます。
コラーゲン合成に関わり強い血管を作るので、欠乏すると壊血病を起こします。
ビタミンCが欠乏すると抑うつ、ヒステリー、疲労と無気カ等の精神的な異常などの症状が現れます。
ビタミンCが欠乏すると骨形成不全、骨粗しょう症を起こすとの報告があります。
ビタミンCが欠乏すると風邪を引きやすくなります。
ビタミンC欠乏で歯肉色素沈着症を起こします
軽度のビタミンC欠乏では疲労を起こします。
ビタミンCの過剰摂取による副作用
ビタミンCの過剰摂取による副作用などの危険性は以下の通りです。
ビタミンCは許容上限摂取量(成人2000mg/日)を超えない量使用するのであれば安全です。1日当たり10gの摂取でも副作用は認められない等の報告があります。
ビタミンC過剰摂取で鉄の吸収過剰、グラム単位の投与にともなう下痢や腹部鼓腸、高尿酸血症の可能性があります。2000mg/日を超える量を摂取することは、浸透圧性の下痢や胃腸の不調などの有意な副作用のリスクを増加させる可能性があります。
妊娠中及び授乳中も経口で適切に摂取する場合、ビタミンCはほぼ安全です。ただし経口で許容上限摂取量(妊娠および授乳中成人女性:2000mg/日、妊娠および授乳中14〜18歳女性1800mg/日)を超える量使用するのは安全でないと考えられますので注意が必要です。
また妊娠中のビタミンC過剰摂取は、新生児壊血病の原因となる可能性があるので、避けるべきです。
経口でのビタミンCの副作用は摂取量に依存し、吐き気、嘔吐、食道炎、胸焼け、急な腹痛、胃腸閉塞、疲労、顔面紅潮、頭痛、不眠、眠気、下痢、高シュウ酸尿症、尿酸塩やシュウ酸塩、システイン結石、尿路の薬剤の排出を招くおそれがあります。
1日1g以上のビタミンC摂取で高シュウ酸尿症、高尿酸血症、血尿、結晶尿が生じた例があります。ビタミンC摂取量と尿中のシュウ酸排泄量の関係については因果関係が確立されていません。
健康人が1日1〜2gのビタミンCを3〜6ヶ月摂取した結果、尿中シュウ酸濃度は上昇しなかった。透析患者が1gのビタミンCを反復的に静注投与されたときにのみ高シュウ酸血症と関連が見られます。
ビタミンCは食品中の銅の吸収を低下させ、鉄の吸収を増加させます。鉄過剰症、へモクロマトーシス(血色素症)、サラセミア(地中海貧血)、鉄芽球性貧血の場合、症状が悪化するおそれがあるので、ビタミンCは注意して摂取することとされています。
多量の摂取(通常5g以上)で下痢や腹部膨満が起こります。鉄を過剰に摂取させた患者ではビタミンCは鉄の吸収を促進し。酸化損傷を促進すると考えられます。ビタミンCが健常者やへモクロマトーシスを有する異型接合の患者において、鉄の過剰吸収を引き起こすというエビデンスはありません。
ビタミンCの静注を受けたグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症の患者、および1回に6g以上のビタミンCを摂取した患者で、溶血が報告されています。
ビタミンC1gを連日静注投与した透析患者で、高シュウ酸塩血症が発現しています。
医薬品との相互作用
アスピリンを初めとするサリチル酸系薬剤(ビタミンCがサリチル酸の尿からの排出を妨げるが、臨床的な影響は不明)、ワルファリン(大量なビタミンCと併用すると効果を弱める可能性がある)などの薬剤との併用は注意を要します。
ニコチンおよび喫煙においてもビタミンCの排泄が促進される(相互作用など多量のビタミンC摂取は結石のリスクを高める)ことがあるので、腎結石の既往症がある人は多量摂取しないよう注意が必要です。
アセタゾラミド(炭酸脱水酵素薬)は、大量のビタミンCとの併用で、腎・尿路結石が起こりやすくなることがあります。これは、ビタミンCの代謝物であるシュウ酸の尿中排泄が増加し、カルシウム析出が増長されるためと考えられます。
アルミニウムを含む制酸薬はビタミンCは消化管でのアルミニウム吸収を増加させると考えられます。
1g/日のビタミンCの摂取はエストロゲン代謝を低下させ、血清エストロゲン濃度を増加させます。エストロゲン薬に注意が必要です。
80mgのプロプラノロールと同時にビタミンC(2g)を投与したところ、Cmax(最高血中濃度)、Tmax(最高血中濃度到達時間)、AUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)が低下したとの報告があります。
研究・エビデンス(効果あり)
研究①冠動脈疾患・脳卒中
ビタミンCは、14件のコホート研究(追跡調査)中3件で冠動脈疾患に優位な予防効果を示し、9件の研究中2件で脳卒中に対する予防効果を示しました。
研究②鉄欠乏性貧血
ビタミンサプリメントの摂取と鉄欠乏性貧血との相関性を調べたランダム化比較試験をレビューした結果、ビタミンCを摂取すると食事由来の鉄の吸収がよくなりますが、人ロ研究によると貧血や鉄欠乏の予防の効果はなかった。鉄30mgあたり200mgのビタミンCを併用摂取すると鉄の吸収促進効果があることが示唆されています。
研究③加齢黄斑変性
加齢黄斑変性患者3,640名を対象としたランダム化比較試験の結果、抗酸化物質(ビタミンC500mg、ビタミンE400IU、β‐カロテン15mgと亜鉛80mg)を併用摂取したところ、ハイリスクグループにおける症状の進行を有意に抑えたといいます。55歳以上の5,836名を対象としたコホート研究(追跡調査)の結果、β‐カロテン、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛の摂取量が平均よりも多い人は、加齢黄斑変性の発症リスクが35%抑えられていました。
研究④動脈硬化
45〜69歳の男性及び閉経後女性520名を対象とした3年間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、サプリメントとして1日にビタミンE91mgと徐放性ビタミンC250mgを併用摂取したところ、男性における血管内膜厚の増加がプラセボと比べて有意に少なく、アテローム性動脈硬化の進行を抑えることが示唆された。55〜94歳の心臓血管系疾患のない4,367名を対象とした調査の結果、女性におけるビタミンC摂取量と末梢血管疾患との間に負の相関が有意に認められました。
研究⑤男性におけるがんの死亡率
口腔がん患者754名及びがんを発症していない1,775名を対象とした調査の結果、年齢・性別・医療施設・学歴・職業・BMI・喫煙・飲酒・非アルコールからのエネルギー摂取量で調整した口腔がん発症のオッズ比は、ビタミンC摂取が0.63、ビタミンEが0.74でした。45〜79歳の19,496名を対象とした4年間の追跡調査の結果、男性におけるがんの死亡率低減とビタミンC摂取量との間に正の相関があったが、女性では同様の相関性は見られなかった。
研究⑥風邪
ビタミンCの1日1g以上の摂取と風邪の罹患との相関を調べた21件のランダム化比較試験をレビューした結果、罹患期間と症状の重さが23%低減しました。95組の双子を対象として100日間ビタミンCサプリメントあるいはプラセボを摂取させた試験の結果、ビタミンC摂取により風邪の罹患期間が19%短縮されたといいます。
研究⑦高血圧
高血圧の薬剤治療を受けている患者69名を対象とした6週間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、ビタミンCサプリメントを1日に500mg摂取したところ、収縮期血圧が有意に低下しました。45〜70歳の2型糖尿病患者30名を対象とした4週間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、ビタミンCを1日に500mg摂取したところ、収縮期血圧、拡張期血圧ともに低下し、プラセボと比べて有意差が認められました。
研究⑧女性の胆のう疾患
7,042名の男性及び6,088名の女性を対象とした調査の結果、胆のう疾患(胆石及び胆のう切除)の既往歴があったのは男性235名、女性761名でした。無症状の胆石は男性274名、女性408名で確認されました。血中のビタミンC濃度と胆のう疾患のリスク低減との相関性は女性では認められたが、男性では明らかでなかった。
研究⑨虚血性心疾患
虚血性心疾患患者24名と健常人24名を対象とした二重盲検ランダム化比較試験において、ニトログリセリン耐性を示すマーカー及び前腕部のプレチスモグラフィで測定した血管拡張反応により判定した結果、2gのビタミンCを1日3回摂取したことにより、ニトログリセリン耐性がプラセボに比べて有意に抑えられていました。
研究⑩変形性関節症
640名の変形性関節症患者を対象としたコホート調査の結果、ビタミンCの摂取量と変形性関節症の発症とは相関が見られなかったですが、摂取量が多いと症状の進行を遅らせることが示唆されました。
研究⑪血管性認知症・混合型認知症
71〜93歳の男性3,385名を対象としたコホート研究(追跡調査)の結果、サプリメントとしてビタミンCとビタミンEを併用摂取すると、血管性認知症、混合型認知症の予防に効果が認められましたが、アルツハイマー型認知症には効果がありませんでした。
研究・エビデンス(効果なし)
研究①大腸ポリープ、がん
ビタミンCとビタミンEをサプリメントとして組み合わせて摂取した場合の、大腸ポリープの進行に対する効果を調べた6件の試験をレビューした結果、有意な効果を示す結果はありませんでした。進行したがん患者がビタミンCサプリメントを摂取した7件の臨床試験をレビューした結果、死亡率低減に効果はなかった。
研究②風邪
674名を対象とした8週間の二重盲検ランダム化比較試験の結果、ビタミンCを1日2g摂取したところ、血中のビタミンC濃度が有意に上昇しましたが、風邪の発症頻度、重症度にプラセボ群との有意差は認められなかったといいます。
研究③アルツハイマー病
980名の高齢者を対象として4年間の追跡調査をした結果、カロテン、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化ビタミンの食事やサプリメントからの摂取量とアルツハイマー病の発症リスクに相関性は認められなかったといいます。
研究④がん
がんを発症していない人がビタミンCとビタミンEのサプリメントを組み合わせて摂取した3件の大規模なランダム化比較試験をレビューした結果、がんによる死亡に対しては有意な効果は見られなかったといいます。