もくじ
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の概要
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート、ヒぺクリムソウ)(英 St.John’swort)おとぎりそう科[オトギリソウ属]
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は「気分を明るくする」などの効果を期待したサプリメントやハーブティーとして販売されています。ダイエットや更年期向けのサプリメントに配合されていることもあります。
在来種のオトギリソウは、止血や創傷の民間薬として用いられてきました。
セイヨウオトギリソウはヨーロッパ原産で、軽症ないし中等症のうつ病に対し、治療薬として用いられることもあります。適切に摂取すれば安全で、抗うつ効果のメカニズムは一部解明されており、科学的根拠も明らかにされてきています。ドイツハーブ承認委員会コミッションEでも承認されたハーブです。
しかし、一方で光過敏症などの副作用や、近年明らかとなった薬剤との相互作用もあり、使用には注意を要します。
使用部分は花または果実(貫葉連翹カンヨウレンギョウ)・全草を乾燥します。収れん、抗菌効果があります。ヨーロッパ原産。アジア、北アフリカに分布。オーストラリア、北アメリカ、日本にも帰化し、野生化する多年草で30-90cmの高さ。花期は7〜8月です。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の成分
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の効果効能
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「消化、消化管カタル、胃炎、胃潰瘍、抑うつ、気分変調、緊張、不安、不眠、頭痛、片頭痛、神経痛、強迫性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、坐骨神経痛、鎮静、更年期、月経痛、月経前症候群(PMS)、利尿、浮腫、黄疸、肝臓、結合組織炎、筋肉痛、白斑、打撲傷、擦り傷、炎症、やけど、傷の治癒促進、捻挫、口内炎、皮膚潰瘍、気管支炎、去痰、エイズウイルス、ヘルペス、インフルエンザ、ポリオ、抗菌、下痢、赤痢、寄生虫、がん、疲労、活カ回復、痛風」
油性のセイヨウオトギリソウ抽出物は経口で消化不良に用いられる、胃、腸カタルに用いる、空腹時に少量用いると胃炎、胃潰瘍の治療薬になる等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ抽出物は、軽症あるいは中等症のうつ病に対して有益である可能性が高いといいます。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は抑うつ気分変調、緊張)、不安)、頭痛、片頭痛、神経痛、強迫性障害、季節性情動障害(SAD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、坐骨神経痛などに効果がある、また、抑うつに関連した疲労や食欲不振、不安、神経性の動揺などに経口で効果がある、伝統的に不眠、不安、抑うつに対して効果がある、神経痛に外用で効果がある、神経の鎮静薬として抑うつなどに効果がある等の報告があります。
ドイツのコミッションEでは自律神経障害、憂うつな気分、不安、神経の動揺などへのセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の使用を承認しています。
ヨーロッパの植物療法ではセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の生薬2-4g(ヒペリシン換算0.2-1.0mg)を穏やかな抗うつ効果のため、あるいは神神経系経障害に使用する、ヒぺリシンは生体外においてラットの脳ミトコンドリアのモノアミン酸化酵素(MAO)A型、B型両方をほぼ不可逆的に阻害するという報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の有効成分のうちヒぺリシンはカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)やMAOを阻害することを示唆する動物実験でのデータが報告されています。近年、抗うつ薬としてのセイヨウオトギリソウの活性にヒベルフォリンも関係していることが明らかとなっています。
ヒベルフォリンはシナプスにおけるセロトニンの再取り込みを阻害し、5-HT3および5-HT4セロトニンレセプターに対する拮抗効果を示し、また、GABAやグルタミン酸のシナプトソームによる取り込みを阻害する等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は更年期に関連する気分の混乱に用いられる、伝統的に更年期障害に用いられてきた、ハーブティーにすると月経痛を和らげる、月経前症候群(PMS)に効果がある等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)には利尿効果があるので痛風の治療によいとされるとの報告があります。利尿薬として用いられる、浮腫に用いられる、民間ではお茶を膀胱疾患に用いる等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は黄疸に用いる、ヒぺリシンの肝臓保護効果がマウスとラットで実証されている等の報告があります。
セイヨウオトギリソウの油性抽出物は抗炎症効果を持つ、コミッションEでは油性抽出物を外用で急性の打撲傷、筋肉痛、第一度のやけどの処置およびそれにつづく治療に対する使用を承認している、結合組織炎、筋肉痛、白斑などに用いられる、打撲傷、擦り傷、切り傷、炎症、(第一度の)やけど、筋肉痛、白斑、傷の治癒の促進、捻挫に外用で用いる、リウマチによる骨痛に煎じて摂取する、やけど、口内炎、潰瘍にも効果がある、利尿効果があるので関節炎の治療によいとされる、消炎効果があるので、局所用調合剤に用いられる、お茶、チンキ、オリーブ油に生花を加えたものが皮膚の潰瘍、切断した神経組織の傷、痛み、切り傷、打撲傷などの治療用の民間薬として一般に普及していると伝えられている等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は気管支炎治療の際の去痰薬として効果があるとの報告があります。
HIV/AIDSに用いられる、セイヨウオトギリソウや、そのヒペリシンなどの成分はインフルエンザ、単純へルぺスI・II型、シンドビスウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、C型肝炎ウイルスなどに対する抗ウイルス活性をもつ、グラム陰性・陽性細菌それぞれに対し抗菌活性を示す、ヒぺルフォリンはMRSAなどを含むグラム陽性細菌に対し抗菌活性を有しますが、グラム陰性細菌には効果しない、ヒペルフォリンはブドウ球菌、連鎖球菌に対し抗菌的である等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は帯状へルペスに用いる、合成ヒぺリシンは輸血用抗レトロウイルス薬として現在開発中である、ヒぺリシンとシュードヒペリシンの強カな抗レトロウイルス効果が生体内外で実証されている、ヒペリシンは血液1ml中10万個以上のHIVウイルスを完全に不活性化できる、民間ではお茶を下痢、赤痢、寄生虫に効果がある等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)はがんに経口で用いられる、民間でがんにお茶を用いる等の報告があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は極度の疲労、活カの不足に効果があるとの報告があります。
ヒペリシンが標準化されたセイヨウオトギリソウ抽出物は、不安の自覚症状および測定診断値を軽減するという報告があります。しかし、セイヨウオトギリソウによる不安の増大も生じる可能性があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は不安、気分変調、眠気過多、食欲不振、抑うつ、不眠、精神運動遅滞および他の自覚症状の改善効果が、限られた臨床試験で実証されています。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の副作用・毒性
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は適切に摂取すれば安全であることが報告されていますが、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬に効果することがあり、また、妊娠中、授乳中の摂取は避けた方が良いでしょう。
セイヨウオトギリソウ(SJW)は、抗うつ作用がありますが、光線過敏症の原因となることがあります。また、多くの薬剤との相互作用を有します。
ヒトにおいては光感作はまれにしか見られないですが、色白な人がセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)を使用する場合、過度の日光への照射は避けるべきです。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)はアメリカにおいては規制によりアルコール飲料にのみ、香料としての使用が認められています。またセイヨウオトギリソウの蒸留液はヒペリシンを含まない場合にのみ許可されています。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の副作用としては不眠、明晰夢(ありありとした夢)、落ち着きのなさ、不安、動揺、いらつき、胃腸の不快感、疲労感、口渇、めまい、頭痛、皮膚のかゆみ、錯覚、遅延性過敏反応などが起こることがあります。
不眠が最もよく見られるセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)の副作用ですが、これは摂取量を減らすと軽減されます。
うつ病患者では軽い躁状態や、双極性障害の患者では躁状態が誘導されることがあります。抗うつの用途では一般に使用されている三環系抗うつ薬などの薬剤よりは副作用は少なく、プロザックなどのSSRIとは同等か、やや副作用が少ないと思われます。厚生労働省がセントジョーンズワートと医薬品との相互作用について医薬品等安全性情報で注意喚起を行っています。薬物代謝酵素(チトクロームP450、とくにサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2)が誘導され、インジナビル・サキナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、ジソピラミド・リドカイン(抗不整脈薬)、シクロスポリン・タクロリ厶ス水和物(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、フェノバルビタール(てんかん薬)、経口避妊薬、その他多数の医薬品の効果を減少させる可能性があります。
研究・エビデンス
研究①うつ病
375名のうつ病患者でのランダム化比較試験で、ヒペリシン300mgの6週間投与で軽症および中等症において、有意な効果が認められたとの報告があります。質の異なる複数のランダムに比較試験を組み入れた1件の試験によれば、セイヨウオトギリソウは軽症ないし中等症のうつ病に対する有効性、効果の高い治療であることが見出されました。
研究②強迫性障害
強迫性障害(0.3%ヒペリシン12週間投与で数名の患者の症状をかなり改善)、季節性情動障害(SAD)に関連する不安・性欲減退・睡眠障害などの症状、月経前症候群(0.3%の標準化抽出物で約50%の女性の症状を改善)に対し有効な可能性があります。