黄耆(オウギ)の概要
黄耆(オウギ、別名キバナオウギ、ナイモウオウギ)(英 Milk vetch)まめ科[ゲンゲ属]
黄耆(オウギ)は中国漢方の胃腸、血圧、風邪、利尿などの多くの処方に配合されている生薬です。黄耆(オウギ)の根は日本では「医薬品」扱いとなり、葉・茎が食用に用いられます。
多年生植物であり、羽状複葉を有し、最大80cmになります。直根をもち、黄色の花が咲きます。山腹、日のよく当たる草原や林の周辺を好み、中国東北、華北地方、朝鮮半島、シベリアおよびモンゴル中部に生育します。多年草で、花期は6〜7月です。
黄耆(オウギ)は2000年前の記録もある中国医学の強壮薬のひとつです。適切に摂取すれば安全であり、免疫抵抗カを向上するだけでなく、ストレスへの適応カを上げる効果があるとされています。中国ではオタネニンジン(朝鮮人参)が内的なエネルギーを高めるのに対し、オウギは外的エネルギーを高めるとされます。
医療用医薬品・一般用医薬品ともに、漢方処方として使われることが多いです。—般用医薬品では、滋養強壮薬、女性用薬、ドリンク剤などに配合されていることもあります。黄耆(オウギ)の葉や茎は、茶に利用されることがあります。
医薬品例:キューピーコーワゴールド、黄耆エキス散
黄耆(オウギ)の漢方処方例一覧
使用されるのは、4-10年の根の乾燥物であり、春先の葉の出る前、もしくは秋の葉が落ちた後に収穫されます。根を掘り起こした後、樹冠および細根を除き、通常は天日にて乾燥します。
主として漢方処方薬として使われます。一般的な使用形態は、原料のまま(乾燥根のオウギ)、もしくは加工したオウギ(ハチミツ処理)で、前者は生の根を完全に湿らせてから厚いスライス状に切断し、乾燥し製造されます。後者はスライスした根をハチミツ(根に対し25-30%)とともに中温以上で揚げて作られます。
黄耆(オウギ)の成分
黄耆(オウギ)の主な成分は、ショ糖、グルクロン酸、アミノ酸数種、ミネラル、フォルモノネチン(formononetin)などのイソフラボン誘導体やサポニン、アストラガロシド(astragaloside)、クマリン(coumarin)等です。
オウギは多糖類(ポリサッカライドA〜Dと呼ばれるastragaloglucans、あるいastragalansI〜IVを含みます。フェノール酸(フェルラ酸、カフェ酸)およびシトステロールも含有します。
黄耆(オウギ)の効果効能
黄耆(オウギ)の効果効能として報告されているもの一覧を紹介します。
「血圧、血管拡張、造血、不妊、食欲、下痢、脱腸、胃潰瘍、免疫力、インターフェロン誘起、風邪、外傷、化膿止め、子宮内出血、性周期、血糖値、利尿、腎炎、脾臓、肝臓、腫れ物、組織再生、筋肉成長促進、肺、滋養、強壮、疲労・疲れ、栄養不良、止汗、上気道感染、抗菌、抗ウイルス、エイズ、抗酸化、抗炎症、がん」
黄耆(オウギ)は浸水液、70%エタノールエキス、エタノールエキスを家兎、イヌ、ネコなどに静脈注射すると血圧降下効果が認められた、血圧によいとされる、血管拡張薬として用いられる、降圧薬として用いる、エキスは摘出した動物の末梢血管を拡張する効果がある、がんの化学療法または放射線療法中に、造血効果を目的として用いられる等の報告があります。
黄耆(オウギ)は消化機能の衰弱から起こる食欲不振や下痢の治療に効果がある、伝統的に食欲減退、脾炎による下痢、脱腸に対して効果がある、近年では胃潰瘍に効果がある等の報告があります。
黄耆(オウギ)は免疫機構によいとされ、風邪を引きやすい体質などに効果がある、免疫力の維持、向上を目的に摂取される、伝統的に生の根は免疫力増加、化膿止めに効果があるとされてきた、外傷の回復を早める目的で使用する、ラットを用いた実験で抗アレルギー効果があった、熱水抽出エキスはインターフェロン誘導効果が認められる等の報告があります。
黄耆(オウギ)は伝統的に子宮内出血に効果がある、雄のラットの発情期を惹起する効果がある、不妊症に造血効果を目的として用いられる等の報告があります。
黄耆(オウギ)にはマウスへの実験的な低血糖および高血糖誘発に対する阻害効果がある、血糖値降下効果がある、糖尿病に用いる等の報告があります。
黄耆(オウギ)には利尿効果がある、伝統的に生の根は利尿効果があるとされてきた、オウギの煎剤をラット(皮下)、イヌ(静脈)、ヒト(経口)で投与したとき利尿効果が認められた、漢方では急性もしくは慢性の腎炎に用いる等の報告があります。
黄耆(オウギ)には脾臓や肝臓に効果があるとされる、漢方では肝機能不全に用いる等の報告があります。
黄耆(オウギ)は治癒の遅い皮膚の腫れ物などに効果がある、潰瘍の膿を出し、治癒を促進する、伝統的に生の根は組織の再生、筋肉成畏促進に効果があるとされてきた、平滑筋の収縮効果がある、伝統的に生のォウギは慢性の炎症、病傷、潰瘍、関節痛に用いられてきた、近年では神経性皮虜炎に用いられる等の報告があります。
黄耆(オウギ)は肺に効果があるとされるとの報告があります。
風邪、インフルエンザの予防と治療、上気道感染に黄耆(オウギ)は効果がある、抗菌、抗ウイルス薬として用いる、最近ではエイズの治療も試みられている等の報告があります。
黄耆(オウギ)を摂取したがん患者の多くで免疫機能が強化される可能性がある、乳がん、子宮頸がん、肺がんに対して、トウネズミモチと併用で摂取する、伝統的に生の根は抗腫瘍効果があるとされてきた、水製エキスにはマクロファージの貪食効果増強効果が認められ、エキス中の多糖類には腹腔マクロファージの産生促進効果を有し、抗腫瘍薬としての可能性が報告されている等の報告があります。
黄耆(オウギ)は強壮薬として用いられる、滋養効果を目的に用いられる、虚弱体質、栄養不良に用いる、止汗効果がある、伝統的に生のオウギを寝汗に用いる、抗炎症、抗酸化薬として摂取される、抗酸化効果がある等の報告があります。
黄耆(オウギ)の副作用・毒性
黄耆(オウギ)の副作用・毒性などの危険性は以下の通りです。
ただし、28g以上の過剰摂取で免疫力が低下する可能性があります。妊娠中、授乳中の安全および副作用は報告されていません。
黄耆(オウギ)は免疫抑制効果を減弱させるという知見があります。また、臓器移植を含む免疫抑制治療に影響を与えると考えられるので、同治療中は使用しないこととされています。免疫能に影響を与える可能性があるので、免疫の疾患がある場合は、医師の指示を受けることとされます。
研究・エビデンス
研究①黄耆(オウギ)と風邪・がん
オウギを長期間摂取していると風邪にかかりにくいという知見もいくつかあります。また、トウネズミモチとの併用を補助的治療に用いたところ、乳がんと肺がん患者の生存率を高めたという知見もあります。ただし、これらの用途の有効性、効果については、さらなるデータの蓄積が必要という声があります。